「和田博の多元数論」の完結編‼

<序文より>

 はじめに

 前々著「ベクトルの回転演算子 複素数・四元数・・・・」及び 

前著「ベクトルを回す複素数・四元数・・・・・多元数」において、

「n次元ユークリッド空間のベクトルを回転させる演算子が 

2次元空間(平面)では複素数,3次元空間では四元数, 

4次元空間では八元数,・・・ ,n次元空間では 2^(n-1) 元数, となる」

ことを示した。 

  しかも、この 2^(n-1) 元数は、積に関して結合的な多元環である。 

その意味でも、この多元数は複素数の拡張として相応しいと考える。 

  だが、回転演算子(2^(n-1) 元数)の行列表現については、 

一切触れてこなかった。存在は確信していたが、未解明だったからである。  

 本著の第一の目的は、その行列の存在を明らかにすることにある。 

6次元空間までの回転行列を、前々著・前著の回転演算子となるように 

作り上げていく。その過程で、回転演算の仕組みがさらに明らかになる。 

その作り方は、n次元空間に一般化できるものである。 

  第1章では、「平面上の回転行列は、複素数とみなされる」ことを再確認し、 

「複素平面とは何か」.「複素平面上の点の、複素数による回転とは何か」 

を明確にする。 

また、「ベクトルから複素数を求める演算」としての“複素内積”を 

前々著・前著同様に定義する。 

  第2章では、3次元空間の回転行列を四元数となるよう作り直す。  

ここでの新しい発見は、「互いに可換な、二種類の回転行列=四元数が存在する」 

ことである。それら異種の行列の積により、ベクトルは回転軸の回りを回転する 

ことができる。 

 また、「二種類の回転行列を一方に揃えて演算する方法」も存在し、それを二通り示す。  

「互いに可換な二種類の回転行列=2^(n-1)元数」の存在は、幾何学のみならず、 

物理学や工学においても重要な意味を持つに違いない。  

 CGやロボット制御のコンピュータプログラムでは、 

滑らかな動きを作るため「回転行列を四元数に変換して“球面線形補間”し、 

それを回転行列に戻してベクトルにかける」という。 

そういった応用計算上の二度手間解消にも本著の「四元数としての回転行列」が貢献できる 

に違いない。  

 「n次元空間の回転に対しても、互いに可換な二種類の回転行列=2^(n-1)元数が存在し、 

それら異種の行列の積により、ベクトルは軸の回りを回転する」と一般化できるものであり、 

「二種類の回転行列=2^(n-1)元数を一方に揃える演算方法」も一般化可能である。  

 第3章では、3次元空間の回転行列を拡張することにより、 

4次元空間の「互いに可換な二種類の、回転行列=八元数」を作る。 

  第4章では、「四元数となる回転行列」,「八元数となる回転行列」の成分構成を分析し、 

回転行列の作り方を考察する。それによって、 

5次元空間の「可換な二種類の、回転行列=十六元数」を作る。 

また、6次元空間の「可換な二種類の、回転行列=三十二元数」をも作る。 

行列についての各証明は、省略せずにすべて示す。 

 3次元空間の回転演算にのみ関心のある場合は、 

第1章,第2章,第5章をお読み頂ければ十分である。 

 本著の四元数の回転演算による「ハミルトンの四元数」の解釈も第2章と第5章に示した。 

イメージがつかみ難いとされている「ハミルトンの四元数の演算」を、 

かなり分かり易いものに解明できたのではないかと思う。  

なお、「ハミルトンの四元数」の詳細は、参考文献[1]~[8][11]を参照して頂きたい。  

歴史的には、「ハミルトンの四元数」から「ベクトル解析」が派生した。 

しかし、前々著・前著では、逆に「ベクトル解析」の立場から  

「n次元空間ベクトルの回転演算子」としての「多元数」を構築し、 

本著ではそれらの行列表現を二種ずつ発見して、回転演算の仕組みをさらに解明した。 

 この3部作をもって、一応「ベクトルの回転演算子としての多元数」の理論の大筋は完成した。 

その全貌は、シンプルで非常に美しく感動的である。今となっては、本著からお読み頂き、 

前著,前々著と進んで頂くと分かり易いと思う。  

 本著は、「多元数を表す回転行列の作り方を模索する過程」として書かれている。 

そのため、論理的ではない記述も多々含まれており、それらの理論上の整理については、 

今後の課題として残されている。 

その点をご理解頂き、むしろ「多元数を表す回転行列を作る」過程のときめきと、 

その結果を得る醍醐味を感じて頂きたいと思う。 


 

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